「歯磨きの時間になると全力で逃げるんです」「口を固く閉じて、どうしても開けてくれなくて」。そんな相談を、私も何度となく受けてきました。2歳から4歳にかけて現れる歯磨きイヤイヤ期、本当に大変ですよね。「させる」から「なりたい」へ。歯磨きに向き合う気持ちを変えてくれるのが絵本の力です。今回は年齢別に選んだ10冊と、親子での習慣づけのコツをご紹介します。
歯みがきイヤイヤ期に絵本が効く理由

絵本が歯みがきを変える理由
イヤイヤ期の子どもに「歯磨きしなさい」と言っても効果はありません。この時期の子どもたちは「させられる」ことへの抵抗が強い。必要なのは、子ども自身が「やりたい」と思える状況を作ること。絵本の中の主人公が歯磨きする姿を見て「自分もやってみたい」と感じる——それが、幼児期に最も自然な学び方なのだと思うのです。「興味の芽生え」「真似したい気持ち」「達成感の共有」。絵本を使った習慣づけで多くの親御さんが実感するのが、この3つの変化です。ある日突然、自分から歯ブラシを持ってくる。そういうことが実際に起きるのが、絵本の不思議なところです。
「こすってあそべる!ポケモンはみがき」|とづかみほ・カナヘイ(絵)・日本歯科医師会(監修)|小学館
出版社:小学館 / 著者:とづかみほ / 絵:カナヘイ / 監修:日本歯科医師会 / ISBN:978-4-09-735341-6 / 初版:2021年11月8日 / 対象年齢:2歳〜 / 価格:1,320円(税込)
こするたびにポケモンの歯がピカピカに!夢中になりながら「歯みがきって何か」を体で覚える、日本歯科医師会監修のしかけ絵本
しかけって、子どもにとって魔法みたいなものだと思うのです。指でこするだけで汚れが消えていく、その瞬間に「あ、これが歯みがきなんだ」と体でわかる。頭で説明するより、手が先に覚えてしまうのですよね。ポケモンという存在が、そこにいてくれるから、なおさら夢中になれる。好きなものに引き寄せられながら大切なことを体感していく。日本歯科医師会が監修しているという安心感もありながら、カナヘイさんのかわいいイラストで親も一緒に穏やかな気持ちになれる。歯みがきが「させられるもの」から「ポケモンのおてつだい」になる瞬間が、この絵本にはあるのです。
年齢別おすすめ歯みがき絵本

2歳|歯みがきを「遊び」に変えてくれる絵本
2歳の子どもには、楽しさを前面に出した絵本が効果的です。歯磨きの動きを遊びと重ねてあげることで、子どもは自分から歯ブラシを持ってくれるようになります。親御さんも一緒に声を出しながら読むのがコツ。親が楽しそうにしていると、子どもも楽しくなっていくのですよね。
「はみがきれっしゃ しゅっぱつしんこう!」|くぼまちこ|アリス館
出版社:アリス館 / 著者・絵:くぼまちこ / ISBN:978-4-7520-0689-3 / 初版:2015年1月17日 / ページ数:24p / 対象年齢:1歳〜 / 価格:1,100円(税込) / 歯・はみがきテーマ絵本ナビ2024年ランキング1位
歯ブラシが電車になる!「しゅっぱつしんこう!」のひとことで、子どもが自分から歯ブラシを持って走ってくる
電車が好きな子って、「しゅっしゅっ」という音だけで目が変わるのですよね。理屈じゃなくて、体が反応する感じ。この絵本を読んでいると、歯みがきがそっと電車ごっこに変わっていく瞬間があって、わたしはそれがとても好きなのです。「しゅっぱつしんこう!」という言葉が、子どもの中でどんどん自分のものになっていく。気がつけば歯ブラシを持って走ってくる、そういう子どもの動きが目に浮かびます。親が楽しいと、子どもも楽しい。この絵本は読んでいる大人まで「しゅっぱつしんこう!」と言いたくなる。義務じゃなくて、一緒に声を出したくなる絵本——そういう本って、ほんとうに貴重だなあと感じます。寝る前の歯みがきが「電車の時間」になっていく、それがこの一冊のいちばんの贈り物だと思うのです。
「ノンタン はみがきはーみー」|キヨノサチコ|偕成社
出版社:偕成社 / 著者・絵:キヨノサチコ / ISBN:978-4-03-128080-8 / 初版:1989年10月 / ページ数:24p / 対象年齢:1歳〜 / 価格:660円(税込) / 累計100万部超
「イイイのイー」と声に出すだけで口が自然に開く。35年以上読まれ続けるリズム絵本の金字塔
「イイイのイー」って、口に出すと自然に歯が見えるのですよね。言葉が、動きを連れてくる。1歳ごろの子どもが、気がつくとその顔をしている。そういうことが起きるのが、このリズムの不思議なところだと思うのです。ロングセラーには理由があって、それはきっと、子どもの体が正直に反応するような言葉を選んでいるからなのだと、この絵本を読むたびに思います。読み聞かせていると、こちらまでリズムに乗ってしまうのです。子どもの反応がわかりやすいから、読んでいて楽しい。「はーみー」がその家の合言葉になっていく——それだけで、歯みがきの時間が少し明るくなる気がします。
「はみがきしましょ」|レスリー・マクガイア(著)・ジーン・ピジョン(絵)・きたむらまさお(訳)|大日本絵画
出版社:大日本絵画 / 著者:レスリー・マクガイア / 絵:ジーン・ピジョン / 訳:きたむらまさお / ISBN:978-4-499-30148-0 / 初版:1993年9月1日 / 対象年齢:1歳〜 / 価格:1,980円(税込)
ポップアップって、何度見ても「わあ」ってなるのですよね。しかけ絵本の持つ、あの最初の驚き。かばが口を開ける、その大きさに、子どもはびっくりして、それから笑う。笑いながら口が開く、その瞬間ってとても自然なのですよね。「いっしょにみがかない?」と誘われて、一緒に口を開けてしまう。そういう絵本の誘い方が、わたしはとても好きなのです。動物たちの大きな口を見ながら「あーん」と一緒に言っていると、仕上げ磨きへの声かけがすっと通るようになる気がします。「かばさんみたいに口あーん」という言葉が家の中に生まれてくる——その言葉があるとないとでは、仕上げ磨きの時間がずいぶん違ってくるのではないかなあと思うのです。
3歳|むし歯の怖さより「大切さ」が伝わる絵本
3歳になると「どうして歯を磨くの?」という理由を理解し始めます。この時期は、怖がらせずに歯の大切さを伝えてくれる絵本が効果的。歯を「大切な友だち」「自分の仲間」として認識させることが、長期的な歯磨き習慣につながっていきます。
「にゅうしちゃん」|minchi|岩崎書店
出版社:岩崎書店 / 著者・絵:minchi / ISBN:978-4-265-83054-1 / 初版:2018年4月21日 / ページ数:24p / 対象年齢:0歳〜 / 価格:1,320円(税込) / 第11回MOE絵本屋さん大賞26位
乳歯に名前をつけたら、もう粗末にできない。「好きだから守る」という自然な動機を育てる、0歳から読める一冊
名前がつくと、急にそれが愛おしくなる。にゅうしちゃん、という名前を知ってしまったら、もうその歯をぞんざいにできないのですよね。子どもって、名前のある存在への愛着がとても深い。だからこの絵本は、歯みがきの「理由」を教えようとするのではなくて、歯という存在を好きにさせようとしているのだなあとわたしは思うのです。好きなものを守ろうとする気持ちは、誰に言われなくても自然にわいてくる。minchiさんの絵の柔らかさに、読んでいる親御さんまで癒されてしまう。子どものために読み始めたのに、気がつくとわたし自身がにゅうしちゃんのことを好きになっている。「にゅうしちゃんをきれいにしてあげよう」という動機が、自然にうまれてくるのです。こんな家庭にぴったり:キャラクターへの愛着が強いタイプのお子さんがいる家庭 / 乳歯の生え変わり前後の不安を和らげたい家庭
「むしばいっかのおひっこし」|にしもとやすこ|講談社
出版社:講談社 / 著者・絵:にしもとやすこ / ISBN:978-4-06-132398-8 / 初版:2009年5月7日 / ページ数:28p / 対象年齢:3歳〜 / 価格:1,540円(税込)
虫歯菌が主人公!笑いながら「なぜ磨くか」が自然にわかる。お説教ゼロで理屈を教えてくれる3歳からの絵本
「悪者」を愛らしく描くというアイデアが、子どもの好奇心を正直につかむのですよね。虫歯菌なのに家族がいて、困って引っ越しを考えている。その設定の面白さに、子どもは素直に笑う。笑いながら、でも「歯を磨くと虫歯菌が出ていく」という構造がしっかりと頭の中に入っていく。「なぜ磨かないといけないの?」という子どもの問いに、どう答えればいいかいつも少し迷うのですよね。この絵本は、その答えをユーモアで包んでくれる。「むしばいっかをひっこしさせよう」という言葉が歯みがきの合言葉になっていく——その日常のひとこまが、なんだかとてもかわいらしいなあと思うのです。
「すきすきはみがき」|なかやみわ|三起商行(ミキハウス)
出版社:三起商行(ミキハウス) / 著者・絵:なかやみわ / シリーズ:こぐまのくうぴい / ISBN:978-4-895-88359-7 / ページ数:22p / 対象年齢:1歳〜 / 価格:660円(税込)
「くれよんのくろくん」のなかやみわさんが描く、かわいいバイキンと歯みがきの絵本。毎晩飽きずに読める温かい一冊
なかやみわさんの絵って、温かさの中にちょっとした可笑しさがあるのですよね。バイキンがかわいいから怖くなくて、でもちゃんとインパクトがある。子どもにとってちょうどいい「こわおもしろさ」が、この絵本にはあるのだと思います。「バイキンがくるから磨こう」という気持ちが、自分の中から自然にわいてくる——それが大事なのですよね。外から言われるのではなくて、自分でそう思えること。なかやみわさんらしい絵柄の温かさに、読んでいるこちらまでほっとする。親が言うより絵本が言ってくれたことのほうが、子どもにとって「ほんとうのこと」として残ることって、意外と多いのですよね。660円という価格で、この豊かさが手に入るのも、うれしいことだなあと思います。
4歳|歯医者さんへの不安もやわらぐ絵本
4歳になると歯科検診が本格化します。歯医者への恐怖心を和らげるには、事前に絵本で疑似体験しておくのが効果的。何をされるのかわかれば、緊張は大きく減ります。この時期の絵本は「歯医者さんは怖い場所じゃない」という認識を育てることができます。
「わにさんどきっ はいしゃさんどきっ」|五味太郎|偕成社
出版社:偕成社 / 著者・絵:五味太郎 / ISBN:978-4-03-330330-7 / 初版:1984年5月(2009年新版) / ページ数:32p / 対象年齢:3歳〜 / 価格:1,100円(税込)
ワニも歯医者も「どきっ」としていた。お互い怖いとわかった瞬間、歯科が少しだけ怖くなくなる1984年からのロングセラー
ワニさんも怖い、歯医者さんも怖い。お互いが「どきっ」としている、という発見が子どもの中で何かをほぐすのではないかと、わたしは思うのです。怖いのは自分だけじゃないんだ、という感覚。それだけで、少し楽になれることってある。五味太郎さんが「どきっ」というひとことだけで二つの感情を描いたこの構造が、子どもの心にちゃんと届くのですよね。大人が読んでも、はっとするものがある。同じことばが、立場によってまったく違う意味になる。歯医者が「こわい場所」から「お互いにどきどきしながら向き合う場所」に変わっていく——そういう認識の変化が、この絵本の静かな贈り物だと思います。
「えんまのはいしゃ」|くすのきしげのり(著)・二見正直(絵)|偕成社
出版社:偕成社 / 著者:くすのきしげのり / 絵:二見正直 / ISBN:978-4-03-331960-5 / 初版:2011年11月 / ページ数:32p / 対象年齢:3歳〜(推奨4歳〜) / 価格:1,320円(税込) / 全国学校図書館協議会 選定図書
地獄の鬼たちも虫歯で困っていた。ケラケラ笑いながら「甘いもの食べすぎたら大変」が刷り込まれる最強のユーモア絵本
地獄で鬼の歯を治すというスケール感が、子どもにとってはもう最高なのですよね。こんなに大きくて怖そうな鬼さんたちが、虫歯で困っている。その設定のおかしさに、子どもはケラケラ笑う。笑いながら、でも「甘いものばかり食べると大変なことになる」という感覚が刷り込まれていく。わたしは、笑いが一番深いところまで届くと思っているので、この絵本のやり方がとても好きなのです。大人が読んでも面白いのです。子どもの笑い声を聞きながら読んでいると、こちらまでおかしくなってきて。全国学校図書館協議会の選定図書でもあるということで、笑えるだけじゃなくてちゃんとしたものを読んでいるという安心感もあります。笑えるから何度もリクエストされる——何度も読まれる絵本のメッセージは、子どもの中に深く根を張っていきます。
「はぶらしくんです。」|とよたかずひこ|童心社
出版社:童心社 / 著者・絵:とよたかずひこ / シリーズ:たのしいいちにち / ISBN:978-4-494-00791-2 / 対象年齢:1歳〜 / 価格:990円(税込)
「はぶらしくん」と名前がついた瞬間、歯ブラシは友だちになる。歯ブラシを怖がるお子さんへの最初の一冊
名前をもらうと、怖くなくなるものがある。「はぶらしくん」という名前がついた瞬間、歯ブラシはもう道具じゃなくて友だちになるのですよね。友だちなら口の中に入れてあげてもいい。そういう感情の動きが、この絵本には仕掛けられているのだと思います。シンプルだけど、子どもの心理をよくわかっているなあと感じます。短くてシンプルで、忙しい夜でも読める長さなのがありがたいのです。でもちゃんと、歯みがきへの入口になってくれる。「はぶらしくんが来たよ」という声かけが、するっと通るようになる——言葉がひとつ生まれると、その言葉が毎晩の習慣をやさしく支えてくれるのですよね。
乳歯が抜ける時期を迎えたお子さんがいる家庭には、こんな記事もおすすめです。→ 抜けた乳歯を枕の下へ〈歯の妖精が教える〉世界の子ども習慣6選
節目の贈り物に|子どもが主人公になれるマイステラの絵本

歯みがき習慣が根づいてきたころ、誕生日や入園など節目の贈り物に迷ったとき、わたしがおすすめしたいのがMY STELLA のパーソナライズ絵本です。お子さんの名前・見た目・家族構成を選んでオーダーメイドできる、世界に一冊だけの絵本。読み聞かせの時間が、もっと特別な時間になります。「ようこそ うつくしいせかいへ」(税込6,930円・対象0〜6歳)はエコー写真・名前の由来・家族構成を刻める出産祝い・誕生日ギフトに。「さがして!みつけて!ふしぎなせかいりょこう」(税込6,930円・対象2〜8歳)は家族全員とペットが登場するパーソナライズ探し絵本で、「ママはどこ?」とワクワクしながらページをめくる親子の時間をつくってくれます。
2歳から4歳のイヤイヤ期に、わが子の名前が絵本の中に登場したら?「○○ちゃんがいる!」と夢中で探す体験が、歯みがきタイムの絵本読みをもっと特別にします。
今日から試せる|絵本を使った歯みがき習慣づけのコツ
おすすめは、寝る前の5分間を固定すること。「絵本を読んだら歯磨き」という流れを作ると、自然な習慣として定着していきます。読み方のコツは、子どもと一緒に体を動かすこと。「しゅっしゅっ」という場面では一緒に歯ブラシを動かす真似をする、「あーん」という場面では一緒に口を開ける。こうした参加型の読み方が、子どもの興味を引きつけます。「電車さんみたいに、しゅっしゅっしようね」「にゅうしちゃん、ピカピカになって喜んでるかな?」——絵本の内容を実際の歯磨きに結びつける声かけが、子どもにとって一番届く言葉になります。完璧を求めすぎないことも大切。少しでも歯ブラシを口に入れられたら、たくさん褒めてあげてください。小さな成功体験の積み重ねが、やがて確かな習慣になっていきます。絵本を通じた歯磨き習慣づけは、単なるしつけではありません。親子のコミュニケーションを深め、子どもの自主性を育て、一生の健康習慣を築く時間です。今日から、お子さんとの新しい歯磨き時間を始めてみませんか?
絵本の力で歯みがきへの抵抗感が薄れたら、ぜひわが子が主人公として登場する名前入り絵本もお手元に。「ここに○○ちゃんがいる!」という発見が、毎日の読み聞かせをもっと特別にします。

