「こどもの日の食事、何を用意したらいいんだろう」
そう思いながらスマホで検索しているあなたは、きっと日々の忙しさの中でも、子どもの成長をちゃんとお祝いしたいと思っているお母さんですよね。
この記事では、こどもの日の定番の食べ物の意味をやさしくご紹介しながら、忙しい毎日でも無理なく取り入れられる食卓のヒントをお伝えします。記事の後半では、栄養士の杉山味乃里さんに「こどもの日の食卓、どう考えたらいい?」というお話も伺いました。
杉山さんは、静岡市草薙エリアの就労支援事業所で、料理やお菓子作りを教えている栄養士さん。以前は静岡の老舗食堂で働いていたこともあって、「食べること」と「人の笑顔」がつながる瞬間をたくさん見てきた方です。
そんな杉山さんがお伝えしたいのは、こどもの日の食卓は、完璧じゃなくていいということ。
端午の節句に食べる柏餅やちまきには、子どもの健やかな成長を願う意味が込められています。でも、その意味を「知っている」だけで十分です。知っていれば、スーパーで買ってきた柏餅を食卓に並べるとき、ひとこと子どもに伝えられる。それだけで、ただの食事が「お祝い」に変わります。
「我が家らしい祝い方」を一緒に見つけていきましょう。
我が家らしく祝うって、どういうこと?

こどもの日が近づくと、SNSには手の込んだ料理や華やかな飾りつけの写真があふれますよね。それを見て「うちもこれくらいやらなきゃ」と思ってしまう気持ち、よくわかります。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。端午の節句のお祝いは、誰のためにするものでしょうか。
子どもの成長を祝う日。それが5月5日という祝日の意味です。大切なのは、その日に子どもが笑顔でいられること。そして、お母さん自身も穏やかな気持ちでいられることです。
「ちゃんとやらなきゃ」より「楽しい」を優先する
杉山さんは、介護施設で働いているとき、利用者さんに「昔のこどもの日はどうだった?」と聞くことがあるそうです。返ってくる答えは意外とシンプルで、「柏餅を食べた」「菖蒲湯に入った」「鯉のぼりを見上げた」——そんな記憶が多いとのこと。
手の込んだ料理の話はあまり出てきません。でも、「母が柏餅を買ってきてくれた」「みんなで一緒に食べた」という記憶は、何十年経っても残っている。食卓の風景そのものが、心に刻まれているんですよね。
だから、「ちゃんとやらなきゃ」と自分を追い詰めなくて大丈夫です。伝統行事だからといって、特別なことをしなければいけないわけじゃない。子どもが「楽しかった」と感じられる時間をつくること。それが、我が家らしいお祝いの形ではないでしょうか。
子どもが喜ぶ食卓は、お母さんが笑顔でいられる食卓
杉山さんが老舗食堂で働いていたとき、常連のお客さんがこんなことを言っていたそうです。「料理の味より、つくってくれた人の顔を覚えてるんだよね」と。
子どもも同じかもしれません。お母さんが疲れた顔で「せっかく作ったのに」と言いながら出す料理より、笑顔で「今日はお祝いだね」と言いながら出すシンプルな食事のほうが、子どもの記憶には温かく残る。
こどもの日の食べ物に込められた意味を知っておくと、「これを用意しなきゃ」というプレッシャーから少し解放されます。意味を知っていれば、何を選んでも「お祝い」になるから。縁起のいい食べ物を完璧に揃えることより、家族で「おいしいね」と言い合える時間のほうが、ずっと大切です。
お母さんが笑顔でいられる食卓こそ、子どもにとって最高のごちそうなのかもしれません。
忙しい日でも取り入れやすい、こどもの日の食卓ヒント

ゴールデンウィークとはいえ、仕事があったり、家事が山積みだったり。忙しい中でお祝いの準備をするのは大変ですよね。
ここでは、頑張りすぎなくても「お祝い感」が出る簡単なアイデアをご紹介します。全部やる必要はありません。できそうなものを、ひとつだけ試してみてください。
スーパーの柏餅を食卓に並べるだけでも立派なお祝い
「柏餅は手作りしなきゃ」なんて思っていませんか?
スーパーやコンビニで買ってきた柏餅を、お皿に並べる。それだけで十分です。柏餅は日本の伝統的な和菓子で、端午の節句に食べる定番の食べ物。買ってきたものでも、その意味は変わりません。
大事なのは、食卓に並べるときに「これ、こどもの日のお菓子だよ」とひとこと添えること。子どもは「いつもと違う」ということを感じ取ります。それが「お祝い」の記憶になっていくんです。
柏の葉っぱの香りを嗅いでみたり、葉っぱをめくって餅を見せてあげたり。そんな小さなやりとりが、食育にもつながっていきますよ。
子どもと一緒につくる人気の簡単ちらし寿司
ちらし寿司は、こどもの日だけでなく、ひな祭りなどの行事でも人気の料理です。華やかな見た目が子どもにも喜ばれますよね。
でも、一から作るのは大変。そこでおすすめなのが、市販の「ちらし寿司の素」を使う方法です。
ご飯に混ぜるだけで酢飯ができあがります。あとは、錦糸卵やきゅうり、ハムなど、家にあるものをトッピングするだけ。子どもに「好きな具を載せていいよ」と任せると、喜んで手伝ってくれます。
杉山さんが知り合いの家庭で見かけた光景なんですが、3歳の子が真剣な顔で錦糸卵を並べていて、できあがったちらし寿司は正直ぐちゃぐちゃだったそうです(笑)。でも、その子は「自分でつくった」と誇らしげに食べていたとのこと。
見た目より、「一緒につくった」という体験が大事。忙しくても、トッピングを載せる工程だけ子どもに任せてみてください。
たけのこご飯は炊飯器におまかせ
たけのこは、こどもの日の季節に旬を迎える食材です。まっすぐ空に向かって伸びる姿から、子どもの成長を願う縁起のいい食べ物とされています。
とはいえ、生のたけのこを下処理するのは手間がかかりますよね。水煮のたけのこを使えば、簡単にたけのこご飯が作れます。
お米と一緒に、水煮のたけのこ(細切りにしたもの)、醤油、みりん、だし汁を入れて炊飯器のスイッチを押すだけ。炊き上がったら、彩りに絹さやや刻みのりを載せると、ぐっと華やかになります。
「今日はたけのこご飯だよ。たけのこみたいに元気に大きくなってね」——そんなひとことを添えれば、それだけで立派なこどもの日の食卓です。
こどもの日に食べる定番の食べ物、それぞれの由来を知っておこう

こどもの日の食べ物には、それぞれ由来や願いが込められています。全部を覚える必要はありません。でも、「どうしてこれを食べるの?」と子どもに聞かれたとき、ひとこと答えられると、食卓がもっと豊かになりますよね。
ここでは、端午の節句に食べる定番の食べ物について、やさしくご紹介します。
柏餅に込められた「子孫繁栄」の願い|日本の伝統菓子
柏餅は、柏の葉でお餅を包んだ和菓子です。中には小豆餡や味噌餡が入っています。
柏の木には、新しい芽が出るまで古い葉が落ちないという特徴があります。「子どもが生まれるまで親が守り続ける」という意味に重ねて、子孫繁栄の縁起物とされてきました。
この風習の由来は江戸時代にさかのぼると言われていて、特に関東地方で定番の行事食となっています。
杉山さんがある家庭で聞いた話なんですが、お母さんが子どもに「柏の葉っぱはね、新しい葉っぱが出るまで落ちないんだって。○○ちゃんがずっと元気でいますようにって意味だよ」と伝えたら、3歳の子が「ママもずっと元気でいてね」と返してくれたそうです。
柏餅を通して親子で言葉を交わす時間は、栄養よりもずっと豊かなものを子どもに渡しているのかもしれません。
ちまきが端午の節句に食べられる由来|5月5日の文化
ちまきは、もち米を笹の葉や茅(ちがや)で包んで蒸した食べ物です。もともとは古代中国から伝わった風習で、中国の戦国時代に屈原という詩人を弔うために川にちまきを投げ入れたのが始まりとされています。
日本には奈良時代に伝わり、端午の節句に食べる行事食として定着しました。笹の葉には邪気を払う力があると信じられていて、子どもを病気や災いから守るという願いが込められています。
ちまきは主に関西地方で食べられることが多く、柏餅は関東地方で人気という違いもあります。どちらを食べても、子どもの健やかな成長を願う気持ちは同じです。
お住まいの地域や、ご家庭の好みで選んでいいんですよ。
ちらし寿司やたけのこ料理の縁起の意味|大切な家族のイベント
ちらし寿司やたけのこ料理は、こどもの日に限らず、お祝いごとの定番ですよね。
ちらし寿司に使われる具材には、それぞれ縁起の良い意味があります。
- えび:腰が曲がるまで長生きできるように
- れんこん:先が見通せるように(穴が空いているから)
- 豆:まめに働けるように
また、たけのこは成長を願う縁起物。まっすぐ伸びる姿が、子どもの健やかな成長と重なります。
ブリやカツオなどの出世魚を使った料理も、端午の節句にふさわしい食べ物です。出世魚は成長とともに名前が変わる魚で、子どもの出世や成長を祝う意味があります。
これらの食べ物を全部揃える必要はありません。ひとつでも食卓にあれば、「今日は特別な日」という雰囲気が生まれます。大切な家族のイベントとして、できる範囲で楽しんでくださいね。
食べ物の意味を子どもに伝えるやさしい声かけ
端午の節句の食べ物には、それぞれ願いが込められています。でも、その意味を子どもに伝えるとき、難しく考える必要はありません。
「これは縁起がいいから」「昔からの風習だから」——そんな説明より、もっと簡単な言葉で十分です。
「大きくなってね」の感謝の気持ちを言葉で伝える
こどもの日は、子どもの人格を重んじ、子どもの幸福をはかる日です。1948年に国民の祝日に関する法律で制定されたとき、「母に感謝する日」という意味も含まれました。
だから、こどもの日の食卓では、「大きくなったね」「元気でいてくれてありがとう」と伝えてみてください。
柏餅を食べるときに「ずっと元気でいてね」と言う。たけのこご飯を食べるときに「たけのこみたいにぐんぐん大きくなってね」と言う。それだけで、食べ物に込められた「成長を願う」気持ちが、子どもに伝わります。
栄養の話や歴史の話は、子どもがもう少し大きくなってからでいい。今は、「あなたが元気でいてくれて嬉しい」という気持ちを、言葉にして伝えることを大事にしてみてください。
伝統行事は「知る」ことから始めればいい
5月5日は、もともと端午の節句として、男の子の成長を祝う日でした。兜や五月人形を飾り、鯉のぼりを揚げ、菖蒲湯に入る。そんな伝統的な祝い方があります。
でも、すべてを完璧にやる必要はありません。
「なんでお風呂に葉っぱを入れるの?」と子どもに聞かれたら、「菖蒲っていう強い香りの葉っぱで、元気になれるんだって」と答えればいい。「なんで鯉のぼりを飾るの?」と聞かれたら、「鯉は強い魚で、滝も登れるんだよ。○○ちゃんも強くなれますようにって意味だよ」と答えればいい。
伝統行事は、「知っている」だけで十分です。知っていれば、子どもに伝えられる。伝えることで、行事に意味が生まれる。
今年は「こどもの日って何の日か」を知っただけでも、一歩前進です。来年はまた違う形で祝えばいい。家族の形が変わっていくように、行事の祝い方も変わっていっていいんですよ。
栄養士・杉山味乃里さんに聞いてみました|こどもの日の食卓、どう考えたらいい?

ここまで、こどもの日の食べ物の意味と、忙しい毎日に取り入れやすい食卓のヒントをご紹介してきました。記事の最後に、栄養士の杉山味乃里さんに、こどもの日の食卓についてお話を伺いました。
——杉山さん、「こどもの日に何を食べさせたらいいですか?」というご相談を受けることもあるそうですね。
「実際に社員食堂で働いていた頃は、限られた予算や時間の中で、栄養バランスを考えながら、毎日飽きずに食べてもらえる献立を組むことに頭を悩ませていました。
どれだけ栄養を考えて作ったメニューでも、『おいしいね』と笑顔で食べてもらえるかどうかで、その食事の印象はずいぶん変わるんだなと感じていました。
手間をかけて出汁をとった料理でも、シンプルな一品でも、『おいしいね』と笑って食べてもらえると、それだけで場の空気がふっとやわらぐんです。
子どもにとっても同じで、『おいしいね』と一緒に食べる時間の中に、自然とお母さんやお父さんの気持ちが伝わっていく。そんな時間のほうが、きっと記憶に残るんじゃないかなと思います。
子どもも同じです。『おいしい』と感じる瞬間の積み重ねが、食への自信につながっていく。だから、栄養バランスより先に大切にしてほしいのは、食卓が楽しい場所であることなんです。
端午の節句だからといって、特別な料理を作らなきゃと焦らなくていい。柏餅をひとつ買ってきて、『これ、おいしいね』と一緒に食べる。それだけで十分なんですよ。」
——杉山さんが以前働いていた老舗食堂のお話も、印象的ですよね。
「私が以前働いていた老舗食堂では、鶏ガラとアジの煮干しで出汁を引いていました。手間はかかりますが、その出汁で作ったお味噌汁を飲んだお客さんが『懐かしい味だね』と言ってくれる。その瞬間が、何より嬉しかったんです。
でも、毎日そんな出汁を引く必要はありません。顆粒だしでも、インスタントでも、『一緒に食べる』という時間があれば、それでいい。
こどもの日の食べ物には、柏餅やちまき、たけのこご飯など、縁起の良いものがたくさんあります。それぞれに成長を願う意味や、邪気を払う由来がある。知っておくと、食卓での会話が広がりますよね。
でも、全部を用意する必要はないんですよ。」
——お母さん自身の心の余裕も、大事だとよくおっしゃっていますね。
「お母さんが笑顔で楽しそうに食卓についていれば、子どもも『自分もやってみよう』となります。毎日何種類も作らなくていい。シンプルでも、一緒に食べる時間があれば十分です。
私も実は、完璧な食事を作れているわけじゃありません。仕事から帰ってきて疲れているとき、レトルトに頼ることもあります。それでも、食卓に座って『いただきます』と言う。その瞬間があれば、それでいいと思っています。
こどもの日は、子どもの成長を祝い、母に感謝する祝日です。だから、お母さん自身も、自分をいたわってあげてくださいね。『今日は頑張らない日にしよう』と決めてもいい。
完璧な食卓より、楽しい食卓のほうが、子どもの記憶に残ります。
今年のこどもの日は、ひとつだけ、その子が好きなものを聞いてみてください。『今日は何が食べたい?』と。そこから始まることが、意外と多いんです。
子どもが選んだものを一緒に食べる。それが、我が家らしいこどもの日の食卓になっていきますよ。」
まとめ
こどもの日の食卓に「正解」はありません。柏餅でも、ちらし寿司でも、子どもが「食べたい」と言ったものでも、家族で一緒に食べれば、それが我が家らしいお祝いです。
杉山さんの言葉のとおり、お母さんが笑顔でいられることが、子どもにとって最高のごちそう。今年は、ひとつだけ「これをやってみよう」と思えることから、是非始めてみてください。

栄養士杉山味乃里さん
静岡県清水市出身の栄養士。
ホテルグランヒルズ静岡の社員食堂で栄養管理・献立作成を担当した後、同ホテル内の鉄板焼レストラン「けやき」で食材の目利きと調理技術を習得。
1954年創業の老舗食堂「蒲原館」で修行し、店を任される。鶏ガラ・げんこつ・アジの煮干しで引く昔ながらの出汁を継承した経験を持つ。
現在は静岡市草薙エリアの就労支援事業所で料理やお菓子作りを教えながら、食と健康、子どもの食をテーマに発信を続けている

